テクノロジーによる教育支援への挑戦

テクノロジーによる学びの支援へのチャレンジについて書いていきます

新しい情報教育@東京大学駒場キャンパス

1月14日土曜日に東京大学駒場キャンパスにて開催された下記のシンポジウムに参加してきたので、そのご報告。すごく面白かった。川合先生の司会が切れがよくて最高。

公開シンポジウム
新しい情報教育 --その理念と実践--

演者とテーマは以下の通り。

それぞれ私なりの所感を書きます。

  • 永井氏
    • 概要: 教育における「情報」という言葉の使用される文脈は、「情報教育」と「教育の情報化(一般科目における情報技術による支援)」の2つがある。さらに現在高校で展開されている情報科目A,B,Cは重なる部分が少なく、センター入試にも採用されていないので、なかなか注力して指導されていない。
    • コメント: センター入試に採用されないと授業でも扱わない進学校などがあるらしい。通年4単位になればよいのだが、授業時間の短縮などもあるらしく厳しそう。なんとか関心を持った生徒がもっと勉強したいときの情報源をまとめて提供したりできないものか。Rubyなんかどうでしょう?どのOSでも動きますし、文法はシンプルだし、Webアプリもカンタンに書けるし。
  • 筧教授
    • 早稲田ではWeb/Eメールの使い方を教えたり、Excelのマクロを教えたり、いろいろしてきたが、どうもアプリーケーションの利用など表層的な理解にとどまり、情報処理の本質や物事を考える訓練にはなっていない。レポートはインターネット上からコピーした文書だらけで、卒業論文を書く段になって、日本語が書けない(おサルさんのような)学生がとても多く、愕然としている。そこで早稲田大学では商品説明的な授業は止めて、アカデミックリテラシー(アカデミックな活動をする上での最低限の常識を教える)を教える授業に移行する。2006年度はWeb教材を蓄積し、適宜リバイスしながら改訂していく。
    • コメント: アプリケーションの使い方を省いて、クリティカルシンキングなど頭を鍛えると言う方向は素晴らしい。ぜひ、よい教科書を書いていただきたい。筧先生のアツい語り口調は聞き惚れてしまいました。いろいろ苦労されている様子も垣間見えますが、めげずにがんばってください!
  • 吉見教授
    • 文科系にとっての情報技術はあくまでも手段であり、目的は(テクスト/社会)の理解である。
      • テクスト(言語、イメージ)の知としての人文学
      • 社会(日常世界・システム)の知としての社会科学
    • デジタル情報技術により以下のような影響がもたらされる。
      • テクストの物理的基盤が書物からデジタルへ
      • テクスト分析方法論が、近代知の縦割構造からネットワーク化された横断構造へ
    • デジタルアーカイブプロジェクトの紹介。
    • 西周の紹介した百式連環(エンサイクロペディア)は、さまざまな学びが幾重にも重なりあっている姿。現代は、

新百学連環 = 知的創生・継承システムの構築

    • が課題である。文書・資料の統合アーカイブ(メタアーカイブ)と概念・方法の統合アーカイブ(エンサイクロペディア)を用いて、デジタル世界と現実の教室の百式連環型統合を図るのが大学における人文知の目指すところである。
    • コメント: エンサイクロペディアが単なる百科事典としてだけではなく、文化的運動としての価値を持つことは興味深い。しかし、人文知をアーカイブするとはどのようなものになるのだろうか。また、その中でWeb2.0な技術を活用すると人間が自動でリンクしなくても、有用な知を抽出したり、知を体系化する支援などが実現できるのではないだろうか。その辺りを明らかにしていきたい。
  • 竹内教授
    • IPAの未踏プロジェクトなどを担当しているが、できるプログラマは中学2,3年の頃にプログラミングを体験している。これは国語能力の向上と相関があると考えられる。自分が何をしたいのかということを文章化する能力が必要で、「国語力」を鍛錬する必要がある。
      • コメント: 抽象化して考える能力、文章や概念の構造化をする能力の鍛錬が必要である、というポイントに同感。確かにアメリカ企業は汎用的パッケージを生み出すのが得意で、日本的IT企業はカスタムメイドの開発を得意としてきた。これからは受託開発だけではなく、ある程度汎用的なシステムを迅速に開発し、問うていけるような主体が必要である。ぜひ、そういう企業を作りたい。
  • 川合教授
    • 概要: 東大では1987年からいろいろ試行してきたが、2006年度より新カリキュラムに移行する。教科「情報」の全体の基礎、科学的側面、社会的側面という構成ではなく、
      • 人間関連の側面(情報の表現,伝達)
      • 社会関連の側面(情報システム,ユーザインタフェース,情報と社会)
      • 問題解法の側面(データと計算のモデル,計算機械)
    • という構成とする。すでに教科書は書いており、1月17日に出版予定。
    • コメント: 1988年入学当時は富士通製のFM16ベータでTurboPascalでプログラミングを習った。それまでBASICしか見たことがなかったので、高級だなあと感動したのを覚えている。その頃はパソコンが高価で買えなくて、学生会館のTSG(理論科学グループ)の部室でいろいろ勉強しました。PascalじゃなくてCを勉強しろ、と言われていろいろやっていたのが懐かしい。まさか3年後にそれを仕事にするとは全く予想していませんでしたが。ところで、新カリキュラムですがカリキュラムがきっちり体系化されていて、こういう講義を受けたかったなあと思います。それでもついていけたかどうかわかりませんが。実習の鞍馬曲線を書くところではまっていたワタシ。。。数学力不足でコーディング以前に数式を解けずにクラスメートに教わりました、トホホ。あれから、18年も経ちました;-)ちょっとは進歩したんだろうか。

1時から6時までと長い時間で椅子にじっと座っているのは苦痛でしたが、とても刺激的な内容かつ進行で、ずっと聞き入ってしまいました。演者のみなさんありがとうございました。いいアイデアを思いついたら聞いていただきたいと思います。

私は情報教育そのものも興味がありますが、今年は

「教育の情報化」

つまり一般科目における情報テクノロジーの利活用を広めていきたいと思います。

コースマネジメントシステムは正に「教育情報化」を推進する上で欠かせないツールであって、日本以外の国の教育機関ではほぼ100%普及しています。ぜひ、日本でも普及を試みたいと思います。まずは無償で利用できるMoodleなどの普及に貢献したいと思います。