テクノロジーによる教育支援への挑戦

テクノロジーによる学びの支援へのチャレンジについて書いていきます

Sakai Project = 坂井プロジェクト!?


Moodle入門の第1章ですが、Sakai Projectの解説文を追加しました。


北米やヨーロッパの大学では1990年代後半から2000年初頭にかけて、BlackboardやWebCTなど商用のコースマネジメントシステムが急速に普及しました。これは価格がそれほど高額でなかったことと、各教育機関で開発するよりも低コストでの導入が実現できたためだと考えられます。今や北米、EU諸国、オーストラリア/ニュージーランドなどの教育機関におけるコースマネジメントシステムの導入率は、初中等教育機関も含めほぼ100%に達し、全科目で利用される割合も50%近くに達しています。大学の授業にはフィールドワークや実習などもありますので、座学でのほとんどの授業で利用されていることになります。小学校や中学校でも利用されていて、彼我の差はどうしてこうも大きいのだろうと嘆息してしまいます。日本は技術的にもインターネットの普及率的にも上を行ってるんですけどね。教育機関の取り組みが遅いだけなんでしょうか。それとも、人材育成や教育への取り組む姿勢の違いでしょうか。その辺りを明らかにして、いい方向にシフトできるようにしたいですね。


こうした商用システムはとても高機能ではありますが、

  • Blackboard社のWebCT買収による独占状態の出現
  • 継続的な価格高騰懸念

などから、昨今はオープンソースのコースマネジメントシステムへの期待が高まっています。とりわけ、アメリカの有名校が参加するSakaiプロジェクトとオーストラリアのMartin Dougiamas氏をリードデベロッパーとするMoodleが多くのユーザを集めています。


Sakaiプロジェクトは正確にはオープンソースではなく、コミュニティソースと呼ばれ、Sakaiプロジェクトの会員になった教育機関に対してはサポートを提供しましょう、というもので興味深い取り組みです。ちなみに、Sakaiプロジェクトの「Sakai」は、料理の鉄人に出てくる、レストラン「ロシェル」の坂井シェフにちなんだものです。ミシガン大学では以前から学内でコースマネジメントシステムを開発していました。そのシステムの名称が「CHEF(シェフ、と読む)」だったので、シェフの次に来るものということで「Sakai」と名付けられました。

http://sakaiproject.org/

Sakaiプロジェクトは2006年1月現在バージョン2.1ですが、今後も進化が期待されます。ただし、技術的にはJava Server FacesやSpring, Hibernateなど最先端のサーバサイドのJavaテクノロジーを採用しており、専任の技術者を抱えていない教育機関には運用が難しいのではないかと思われます。そこで、私たちが注目しているのがMoodleなのです。PHPMySQLならなんとか手に負える場合もあると思いますので。

順次ほかのオープンソースCMSも紹介していきたいと思います。

それから、日本ではLMS(ラーニングマネジメントシステム)と呼ぶ人が多いのですが、アメリカだとLMSは企業向けのソフトウェアで人事管理システムと連動しているSavaやDocentなどを指すようです。CMS(コースマネジメントシステム)はそれに対して、教員が学習や指導に関わることを想定して開発されていて、標準で搭載されているツール(モジュールと呼ばれることが多い)が異なります。たとえば、LMSにはコンピテンシーマネジメント関連のツールやAPIが付属しています。これは従業員のスキルをアセスメント(診断)して、弱点をeラーニングで学ばせる、という学習プロセスを想定しているためでしょう。教育機関では今のところ、コンピテンシーマネジメント的な発想を取り入れているところは少ないのですが、ちらほらそうした仕組みを取り入れて、教育の成果保証をしよう、なんて話も聞きます。ただ、かなり大掛かりな仕組みなので開発にはかなりコストがかかるでしょう。そこまでの投資をして取り組む大学が出てくると面白いですね。

ITSS(ITスキルスタンダード)などはそうした路線を狙っているのでしょうかね。確か早稲田大学のIT教育研究所(後藤先生のところ)で大学の授業とITスキル標準マッピングする取り組みをしていたと思います。

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蛇足ですが、「料理の鉄人」はとてもアメリカで人気があるそうで、「アイアンシェフ(iron chef)」というタイトルでテレビで再放送をしています。それから、オーストラリアの元同僚(Javaプログラマ)は日本のアニメが大好きで、「甲殻機動隊がどーのこーの」と一生懸命話してくれましたが、いまいちついていけず、「なんで?日本ではアニメは見ないの?」と不思議がられました。彼女はもう結婚して同い年くらいですがアニメとスターウォーズ大好きだそうです。日本みたいにヲタク、っていう分類はないそうで。面白いなあ、と思いました。